ぽんぽこらんどを創業して11年が過ぎました。
どの会社でも同じで、創業時には想いも取引先もほんの身近な所から始まっていると思います。
私ももちろんそうでした。
数年前に亡くなってしまったのですが、大好きだった岩城島のおじいちゃん農家Sさんから聞いた買い取り価格にショックを受け、アメリカの大統領リンカーンは南北戦争で奴隷を解放したのに、日本には奴隷制度がまだ残っている!と一人で怒ってました。
この「奴隷」という言い方は正しくも、全てでもないのですが
「作り手は買い取り価格も良く分からず、淡々と作り続けている」
という農業界を意味しています。
私はアメリカではビルの設計の会社、帰国後は経営コンサルタント、商店建築、船舶艤装品などの会社に勤めてきましたが、営業マンだった私はすべての会社で製造→卸→販売において自分の会社の原価(製造原価や仕入値)と販売価格は絶対に把握しておかなければならないものでした。
また、支払いは現金なのか手形なのか、また、いつなのかも契約時に明確に決められていました。(当たり前ですが)
しかし、農業は違います。
どれだけしっかり作っていても、あるいは適当に作っても「市場」という大きなブラックボックスの中に入るとその努力や想いは報われず、淡々とキロ単価で買われます。
しかも価格について、農家さんは拒否できません。
更に、その支払い予定額の中から様々な経費が引かれ、挙句、それがいつ振り込まれるのかもはっきりとは分からないというのです。
そんな危なっかしい商いってありますか?
少なくともそれが生業といえるでしょうか?
ぽんぽこらんどがどうしてもしたかったのは、農業界ではご法度だった単価の交渉です。
しかも農家さんにたくさん支払う為のです。
具体的にやったのは、
・農家さんが栽培上、努力した内容を園地や倉庫でしっかり見聞きし評価する(絶対に嘘をつかせない)
・既存の市場よりはるかにいい価格で買わせてもらい、翌月前半には支払代金全額を現金で手渡しする
・栽培方法以外に鮮度が高いものは少しでも高く買う
・私の価格以外に農家さんの希望価格を考えさせる
・市場ではこういう所は気にしないけど、こういうのは気にする、など購入側の意見を農家さんの作り方にフィードバックさせる
・未来のある(若手や次の代がいる)農家さんからの仕入価格は少し高く設定する
価値を評価して、正当な対価を請求する、お支払いするという当たり前のことすら当時の革命でした。
そして、最終的には農家さんに4つのお約束を伝えました。
真面目を対価にします(そのためにも正直さを詳細に教えてほしい)
労働対価の案分をします(本当の意味での平等)
作っているもので誰かを幸せにしている実感を与えます(お客様の声を伝える)
努力は必ず報われることを証明します(さらにいいものを作るため)
これを続けていたから、うちは当然大赤字です(苦笑)
預金残高が足りずにカードが使えなくなったことも何度もありました。情けないし、不安だし・・・。
でも、辞めずにやってきたのは強い「自信と責任感」があったのだと思います。
「こんなにいい物なんだから売れないわけがない!」
「農家さんの苦労を対価に変えなければならない!」
この2点があったから、対面販売から帰って
「売れなかった…」と農家さんに絶対言えない状況を自ら作ってました。
これからの5年でぽんぽこらんどは大きく舵を切ると思います。
「嘘の無い商品でお店の棚を埋め尽くせば、世の中はもっときっとよくなる」
これからのぽんぽこらんどの5年間はさらに面白くなります。ご期待ください。
株式会社 ぽんぽこらんど
代表取締役 古崎公一